財形貯蓄について最初に知るのは以下の事柄だと思います。
- 給与から天引きされる
- 住宅や年金などの種類がある
- 利子に対しての所得税が控除される
「総務や先輩、親がお勧めしてくれるからなんとなくやる」と言う方が多いのではないでしょうか?
しかし、財形貯蓄も金融商品の1つです。メリットが目立ちがちですが、デメリットもあります。お金に関する事なので、なんとなくではなく正しい知識を身につけて、理由や目的を持って利用しましょう。
とは言え、財形貯蓄は勤め先の企業がこの制度を導入している場合にのみ利用できるので、その点は注意してください。
そもそも財形貯蓄とは?
財形貯蓄とは、「財形貯蓄制度」の略で、勤労者退職金共済機構は次のように定義しています。
財形貯蓄は、給与からの天引き(賃金控除)で行う貯蓄制度で、「一般財形貯蓄」「財形年金貯蓄」「財形住宅貯蓄」の3つがあります。会社は社員の給与から毎月一定額を天引きし、これを財形貯蓄取扱金融機関に払い込みます。会社は制度を導入・運用することで、社員のライフイベント(結婚、マイホーム、教育、老後など)で必要となる資金づくりを支援することができます。
具体的には次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
金利が比較的高い
例えば三菱UFJ信託銀行の場合、「普通預金金利」の場合は年利率が0.020%である一方、固定金利適用の財形貯蓄の場合は0.100%の金利で、半年複利で利息計算されます。 ただ、利用する金融機関は企業によるので、自分で選択することはできません。
「財形持家融資」の利用が可能
「財形持家転貸融資」は、財形貯蓄を行っている勤労者が利用できる住宅ローンです。
これは住宅の建設・購入(中古住宅も含む)・リフォームに利用できます。財形貯蓄の残高に応じた融資を、事業主(事業主団体・福利厚生会社を含む)を通じて、長期・低利で受けることができます。
融資限度額は、財形貯蓄残高の10倍以内で最高4000万円まで、住宅の建設・購入・リフォームに要する費用の90%以内です。
財形給付金制度・財形基金制度「財形給付金制度」
「財形基金制度」とは、企業が毎年一定額の拠出を行い、7年経過ごとにその拠出金と運用益の合計を給付金として社員に支払う制度です。
ただし、財形制度があるからといってこの制度があるとは限らないので、企業が作成している就業規則や労働協約で確認する必要があります。
あわせて読みたい
財形給付金制度・財形基金制度|貯蓄・融資のご案内|勤労者財産形成事業本部
デメリット
貯蓄開始から1年間は払い出し不可
普通預金に比べて、1年間は資金流動性が劣ります。逆に言えば、1年間は崩れない貯金なので、意志の弱い方にはこの特徴が幸いするかもしれません。
財形貯蓄の2つの型
財形貯蓄として利用する金融商品は「貯蓄型」と「保険型」があります。
貯蓄型
銀行や証券会社等が取り扱う。 金融商品は預貯金や公社債投信、株式投信等がある。
保険型
保険会社等が取り扱う。 保険商品である。
財形貯蓄の3つの種類
財形貯蓄には3種類あります。
- 一般財形貯蓄
- 財形年金貯蓄
- 財形住宅貯蓄
それぞれ上記のメリット・デメリットを共通して持っています。加えて、各種固有の特徴を持っています。詳しく見てみましょう。
一般財形貯蓄
一般財形貯蓄は使用目的を限定せずに、自由に使える貯蓄です。次のような特徴があります。
利子等非課税の優遇措置が無い
利子に対して20.315%課税されます。 (国税15%、地方税5%。2013年1月1日から2037年12月31日までは、国税に復興特別所得税(0.315%)が付加されます。)
一般財形貯蓄は普通預金に似た金融商品ですが、利子が比較的高い、貯蓄開始から1年間は引き出し不可、給与天引きによる自動貯蓄といった相違点があります。
財形年金貯蓄
財形年金貯蓄は60歳以降に年金として受け取るための老後の資金づくりを目的としています。要は老後に備えるための貯蓄です。次のような特徴があります。
- 「財形住宅貯蓄」と合わせて、貯蓄残高550万円まで利子等に税金がかからない
- 受取期間は満60歳以降に5年以上20年以内(保険商品の場合、終身受け取りも可能)
- 年金以外の払い出しを行うと、要件違反で非課税措置がなくなり、残額は「財形年金貯蓄」と認められない。
- 年金以外の払い出しを行うと、預貯金などの商品は、5年遡及課税で過去5年間(60ヶ月)の利子に課税される。
- 過去5年間の貯蓄については一般財形貯蓄の扱いを受ける。
- 年金以外の払い出しを行うと、保険などの商品は、差益について一時所得課税(差益-50万円控除)×1/2に総合課税。
- 災害や疾病など、やむを得ない理由での払い出しには、税務署長の確認が必要。この場合、全額払い出しで解約になる(5年遡及課税のペナルティは無いが、払出時の利子は課税)。
財形住宅貯蓄
財形住宅貯蓄はマイホームの建設・購入・リフォームなど、住まいの資金づくりを目的としています。尚、不動産投資は目的の対象外です。次のような特徴があります。
- 「財形年金貯蓄」と合わせて、貯蓄残高550万円まで利子等に税金がかからない
- 住宅の建設・購入・リフォーム以外の払い出しは要件を満たさないため、利子等に課税される
- 預貯金などの商品は、5年遡及課税で過去5年間(60ヶ月)の利子に課税される。
- 保険商品(生命保険・損害保険など)の場合、解約時に一括して利子(差益)が生じるため、全期間の利子(差益)に課税される。
まとめ
資産運用の基本は「終わりを思い描くところから始める」です。つまり、何年後にいくらの貯蓄が必要かを先に決めてから逆算して毎月・賞与の積立金額を決めます。
例えば、結婚資金として、入社してから5年で250万円を貯めたいとします。 (ちなみに結婚資金の実質負担金は2人で約516.5万円が平均です。知っておいてもいいかもしれません。) とすると、毎月4.2万円積み立てていく必要があります。そこで、毎月の給与から4万円、賞与から3万円を財形貯蓄で天引き、積み立てるようにします。 これは一例ですが、自分の目標に合わせてこの様に積立金額を決定しましょう。
また、どの種類の財形貯蓄にしようか迷っている場合は、とりあえず財形住宅貯蓄を選択しておけば良いと思います。 利子に対して非課税ですし、別に住宅以外に使ったとしても過去5年分の貯蓄が一般財形貯蓄として課税されるだけなので特に損することもありませんからね。