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どうしてこうなったかが1発でわかる!ギリシャ問題まとめ

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2009年から世界が注目するイベントの渦中にいるギリシャ。 2015年には毎日のようにギリシャ問題のニュースが話題になりました。 この記事では「よく聞くけど、ギリシャ問題って何?」という疑問を時系列を追ってわかりやすく解説します。

堕落してしまったギリシャ

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ギリシャはもともと働き者

もともとギリシャ人は働き者だったと言われています。ギリシャ内戦(1946~1949)後の1950年代の復興は目覚ましいものがありました。

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そして、1981年にはEC(European Communities、後のEU)に加盟します。

国民に優しい政策

一方でギリシャの財政政策は公務員の組合が強いこともあって、とても国民に優しいものでした。

大量の高給公務員
ギリシャの公務員の数は他国に比べて非常に多く、生産年齢人口の4人に1人、全国民の10人に1人が公務員でした。 さらにその勤務時間はかなり緩く、時間通りに出勤した人には特別手当が支給されていました。
高額な年金制度
ギリシャで貰える年金の額は、実に退職前の給与の90%以上!そして年金が貰えるのは55歳から! 日本の約3倍に相当する年金を受け取ることができました。
脱税しやすい法整備
ギリシャではレシートを発行しなければ店の売り上げ記録として残らないため、所得を少なく申告することが出来ました。 すると所得税も少なくなりますから、その分を簡単に脱税することができました。

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参考リンク:ギリシャの財政危機の原因とは

こうなると国民はその優しさに甘えてしまいます。 ギリシャ人はみるみる怠け者になってしまったのです。 

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ギリシャの悩み

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そんなギリシャには悩みがありました。借金が多くてユーロを導入したくてもできないのです。 公務員の給与や年金の支払い、脱税による資金不足や2004年のアテネ・オリンピックでの赤字を借金で賄っていたのです。 ついでに言えば、1800年代からギリシャは2年に1回ぐらいデフォルト(債務不履行)になっています。 ユーロにを導入するには財政赤字を対GDP比で3%以下にするという条件をクリアする必要がありませんでした。つまり、「国民全員が作った付加価値の金額に対して政府の赤字が3%以下の金額にしてくださいね」ということです。 しかし当時のギリシャの財政赤字は対GDP比で13%以上ありました。つまり、ユーロを導入するには国民全員が作った付加価値の10%以上のお金を節約するか、徴税するかをしなければなりません。 まじめに考えたら。

赤字隠蔽工作

膨大な赤字によりユーロを導入できなくて困っているギリシャ。 そこへ、アメリカの金融グループであり、世界最大級の投資銀行である「ゴールドマン・サックス」がギリシャが持っている少しのお金を担保に、大量のお金を貸し付けを行いました。 ついに自転車操業に手を出したギリシャ。あまつさえ赤字をこの借金で隠して2001年にユーロを導入しました

不正発覚

2009年、ギリシャで政権交代が起こりました。 ここで新しく与党になったパパンドレウ政権が、旧政権の不正を世界に公開しました。そして、ギリシャがユーロ導入の条件を満たせないほどの赤字であったことが世間に知れ渡りました。 この時のギリシャの財政赤字は対GDP比で12.7%でした。 こうなるとギリシャは誰からも信用されなくなります。すると誰も、どの国もギリシャの国債を買ってくれません。 国債が売れないということは借金ができないということです。 ギリシャの資金繰りは一気に悪化しました。

世界同時株安へ

ギリシャの信用が落ちるということはEUの信用が落ちるということです。 ギリシャから生まれた不信感はギリシャと同様に不信感が漂っていたポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインに波及していきます。 すると「EUが危険だ!」と世界に認識され、EUの共通通貨であるユーロの価値が暴落します。 ユーロの価値が下がるとわかると、ユーロを持っていた人はユーロを売って、別の通貨を買います。すなわち、もっと安心感のあるドルや円を買うのです。 ユーロの値段が下がり、ドルや円の値段が上がる。ドル高、円高の始まりです。 特に日本は輸出産業が多いですから、円高は輸出ビジネスをしている企業にとっては稼ぎにくい状況です。 するとこれらの企業の業績悪化が懸念されるため、あっちこっちの企業の株価が下がっていきます。 これが世界同時株安です。

ギリシャ問題にどう対処するか議論した結果

明るみになったギリシャの問題はEUの問題でもあります。 そこで、EUとIMF(国際通貨基金)は2010年の急財務相会合で、ギリシャに対して今後3年間で1,100億ユーロの融資を行うことで合意。さらにIMFは55億ユーロの融資を行います。 ギリシャにはこの融資を受ける条件として、3年間で300億ユーロの財政赤字を削減することを求められました。 これが緊縮財政政策と呼ばれるものです。 かなり厳しい条件ですが、ギリシャとしてはこの条件をのまざるを得ませんでした。

国民は緊縮財政に猛反発

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緊縮財政はギリシャ国民にとって耐え難いものでした。 ギリシャ政府は緊縮政策として増税、行政サービスの歳出カット、公務員の給料カット・リストラなどを実施しました。 生産労働人口の4人に1人が公務員でしたから、このリストラにより失業率は20%を超えました。若年層においては失業率が50%を超えます。 公務員や多くの国民はこの緊縮財政に強く反対し、デモやストライキが繰り返されました。そして、2010年のGDPは前年と比べて25%と大幅に減少しました。 それぐらい、ギリシャ国民はこれまでに甘い蜜を吸い過ぎたのです。そのツケはあまりにも大きすぎました。

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そしてギリシャは2015年6月末が返済期限のIMFからの融資約15億ユーロを返済できませんでした。

政府も反緊縮政策を謳うように

2015年の総選挙で、反緊縮政策を掲げる急進左派連合が緊縮政策に不満を持つ国民の支持を得て圧勝し、チプラス新内閣が発足しました。 そして7月上旬の国民投票で緊縮政策に反対する声が61.31%と、賛成の38.69%を大きく上回りました。 ギリシャ国民の「もうやってらんねーぜ!」という声が形になりました。 チプラス内閣の仕事は緊縮政策をせずに資金援助を受ける等してこの経済危機を脱することです。 しかし、EUやIMFは緊縮政策に強いこだわりを見せています。ここでどう折り合いをつけるかが鍵になっています。

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一方でギリシャ国内の経済は先行きが不透明なため、国内の銀行の取引が停止されました。これにより、国内にはお金に対する恐怖や不安が広がっています。 ギリシャ問題によって、国内外を問わず経済・金融の不安が広がっているのです。

まとめ

歴史をたどってみると、ギリシャ問題はその1つ1つの出来事が強い感情によって引き起こされていることがわかります。 世界が感情によって動いているというのがよく分かる事例だと思います。