年金や保険で定年後の生活費を賄えなくなってきた今、日本国民は長寿に備えて投資せざるを得ない。自分の資本が多かれ少なかれ、投資家になるということだ。一億総投資家時代だ。
投資をすると少なからず経済の折に触れる。であれば、経済について学んでいないというのはリスクだ。投資先が経済的に見て優秀かどうかの判断ができず、そこに不確実性が生まれるからだ。
僕は大学の専攻に関わらず、基礎教養として経済学を学ぶべきだと思う。
とは言え、理系の僕にとって、経済学をガッツリやるのは腰が重い。そんな中で『ミクロ経済学入門の入門』は、経済学を知らない人にわかりやすく教えてくれる。
150ページしかないからすぐ読める
『ミクロ経済学入門の入門 』の良いところはその読みやすさにある。
まず全部で150ページしかない。厚さにして約8ミリだ。その辺の文庫本より薄い。
だから内容もあっさりしている。
まず数式が出てこない。その代わりに図がたくさん描かれている。
専門用語も少ないと思う。ミクロ経済学とは何か?を知らなくても読めるレベル。
内容も例え話が多い。例えばこの本は「無差別曲線」の解説から始めるが、大体コーラとペプシの話をしている。
無差別曲線とは人の好みを図に描いたものだ。だからコーラとペプシの好みの話で説明できる。
終始こんな調子だ。
人生に大切なことが時々書いてある
学校で学ぶようなことを実生活に活かすのはなかなか難しい。学校で勉強したことは、その程度では、社会に出ても役に立たないと言われるのもよく分かる。
でもこの本には時々行きていく上で大切な考え方がたまに書かれている。
例えばこの一文。
他人のことは分からないというのは、経済学を学ぶうえでとても重要なことだ。
いやいやいやいや
僕は行きていく上でもとても重要なことだと思いますよ。
僕たちはコミュニケーションによって他人を理解しようとするけれども、僕はずっと一緒にいたってその人のことを完璧に理解するのは無理だと思うよ。
続いてこれ。
消費者は、買い物か貯蓄のかたちで所得を使い切るのだ。
この一節。なかなか本質的で僕は好き。
お金って貯蓄すると自分のものだと思ってしまうけど、実際にはそうではないと思う。だって、銀行に預けてるお金って本質的には銀行に貸してるお金でしょ? その時点で少なくとも自分”だけ”のものじゃなくない?
そういう意味では自分のお金って実は1円もないのかもしれない。
こう考えるとお金に執着しなくなって、お金に支配されない生き方ができると思う。
投資家として知っておきたいこと
投資家としてこの本をぜひ読んで欲しい内容が、市場の種類についてだ。
特に知っておきたい一文がこれだ。
市場に競合相手が多いとき、各企業はプライステイカーになる。
プライステイカーとは、自分の生産量が価格に影響を与えられない企業のことだ。
普通、市場には需要と供給のバランスがあるから生産量が少なくなれば価格は上がる。しかし、市場に競合相手が多いとみんなプライステイカーになり、生産量を減らしても価格を上げることができない。つまり、価格競争が起こっており、みんなで足の引っ張り合いをしているのだ。
すべての企業がプライステイカーである市場を完全市場といい、そうでない市場を不完全市場という。
これを知っていると、完全市場に投資してはいけないことがわかる。
完全市場に投資してはいけない
この知恵は万能だ。株でも不動産でも活きる。
投資先の企業や物件が富を生み出せるかどうかは、市場に大きく左右されると言っていい。
完全市場の中でなんとか利益を生み出すより、不完全市場で勝負する方が楽に稼げるだろう。
企業は独自の強みを持ち、競合がいなければ、プライステイカーから脱却することができす。この優位性が高い利益率を生む。
あえて安値をつけるほうが儲かることもある
参入障壁という点から見ると、必ずしも大きく利ざやを抜くことが利益を最大化するとは限らない。あえて安値を先行してつけることで、他人が参入する意欲を削ぐことができるからだ。
1人が大きく儲かっているとみんなそれをやろうとする。すると競争が激しくなり、完全市場になってしまう。
しかし、最初からあまり儲からないビジネスだと、誰もそれをやろうと思わないだろう。すると競争は激しくならない。市場そのものは小さくなってしまうかもしれないが、その市場を独占できる。
僕は、この一手先を読む力は非常に重要だと思う。また、自分本位に考えるのではなく、常に他のプレイヤーがどう動くかを考えながら自分の立ち回りを考えることも大切だ。
特に投資家は他のプレイヤーの存在を忘れがちだ。
株はチャートなど画面を見ることが多いから、その向こうに人間がいることをつい忘れてしまう。
どんな投資でも、他にもプレイヤーがいることを忘れないこと。そして、最初に戻るが、他人のことは分からない。
ミクロ経済学を学んで頭一つ抜けよう
ミクロ経済学から学ぶことは多い。それは経済的な知識だけでなく、人生に大切なこともある。
ぶっちゃけこの本に書いてあることは、知らない人のほうが多いと思う。
知っているか知らないか、そのわずかな差が人生に違いを生む。