日本のような富裕国では人的労働、技術、ノウハウの重要性が高まっています。そのため、各企業はより優秀な人材を求め、イス取りゲームのような環境になっているように思います。
一方で、情報時代が発展するにつれて個人の影響力は大きくなっています。つまり、就職して組織に属しなくても、個人の力で稼ぐことができるようになってきました。さらに、年金問題、インフレ、増税が年々強く意識されるようになって就職して定年まで勤めれば大丈夫とは言えない時代になりました。
そうするとより効率よく稼ぐ、あるいはお金の不足問題を解決する目的で副業を行う人が増えてきそうではあります。また、多くの企業が副業を制限している中でも、ワークシェアリングの推進、企業における副業解禁の動き、短時間労働者の増加及びその均衡処遇のための取組みや就業意識の変化等により、就業形態の多様化が進展しており、これらも副業者数が増える要因になりそうです。
今後の副業のトレンドはどうなっていくのでしょうか?
企業が従業員の副業を制限する理由
たいていの企業は就業規則に副業を制限すると記載しています。そもそもなぜ企業は副業を制限するのでしょうか?
こちらのエントリーによると5つの合理的な理由があるそうです。
- 副業によって本業がおろそかになってしまう場合があるから
- 会社の利益が損なわれてしまう場合があるから
- 会社固有の技術やノウハウが漏洩する場合があるから
- 会社の名前や名刺を使うことで会社がトラブルに巻き込まれる場合があるから
- 副業によって会社の品位を落とす場合があるから
従業員の副業は、企業にとってのリスクだと言えます。
副業を許容する企業の登場
上記のリスクをとりながらも従業員の副業を許容する企業が登場してきました。それが株式会社LiB[リブ]です。
リブでは社員30人のうち、8人がこの「かけ持ち」制度を活用しています。この「かけ持ち」制度は企業が一方的に副業によるリスクを抱えるだけではありません。このリスクをとったリターンとして採用力が向上しています。
このように時代に合わせた働き方の提供が今の企業には必要なのかもしれません。
すべての企業が副業を許容できるか?
リブはベンチャー企業であるため、このような小回りが効くのかもしれませんが、大企業に同じことができるでしょうか?
従業員が副業することによる企業にとってのリスクは従業員数に比例すると考えられます。ベンチャー企業では従業員は多くても数百人ですが、大企業では従業員が何万人もいます。リスクの大きさがまるで違います。
ところがリスクが取れないからといって時代に合わないままでいれば採用力が相対的に低下し、企業としての稼ぐ力がどんどん衰えていくだろうと思います。
大企業にとって働き方の提供は今後の大きな問題になりそうです。
人口から見た副業のトレンド
実際の副業のトレンドはどうなっているのでしょうか? 少し調査してみました。
副業者数の推移
副業とは主な仕事以外に就いている仕事です。つまり副業の従業上の地位や雇用形態には自営業主、家族従業者、雇用者の3つがあります。
今回は本業が雇用者で副業を行っている人口の推移を調査しました。その結果がこちらです。
続いてグラフで表示するとこのようになりました。
こうしてみると意外にも副業者数は減少傾向にあります。これは主に田舎における農林業での副業者数が減少したことによります。詳しくは「サラリーマンの副業―その全体像」をご覧ください。
では副業者数は減ってきているし、企業としてもそんなに従業員の副業に気を遣わなくてもいいのではないでしょうか? と思いますが、そんなに単純ではなさそうです。
二重就職者数の推移
続けて、本業が雇用者で、副業を行っている人の中でも副業においても雇用者である人、すなわち二重就職者の人口の推移を調査しました。結果はこのようになりました。
続いてグラフで表示するとこのようになりました。
こちらは反対に増加傾向にあります。ということはサラリーマンは副業でもサラリーマン、すなわちかけ持ちサラリーマンをやりたいと思っている、と考えられます。これには本業の収入に不安を感じ、もう一つ安定した収入が必要な人が増加している、という背景があると考えられます。
副業というと週末起業のイメージが強いですが、特に女性は、安定した収入源が複数必要だと感じている人が多いのでしょうね。そもそも週末起業をやる余裕はないんだろうなぁという印象を受けるグラフになりました。
一方で企業としては別の企業にも就職したいと考えている従業員が増加していると考えられるので働き方の問題についてはやはり考えざるを得ないだろうと思います。
まとめ
結果、副業者数は減少しているが、かけ持ちサラリーマンは増加しているというトレンドでした。
1つの企業が従業員の人生の面倒を見れる時代は終わりました。これからは企業も、従業員も、働き方について考えなければならないと感じます。企業は働き方の提供を考える必要があり、従業員は自分の面倒を自分でみるには自分の力で稼げるような働き方を考えなければならないでしょう。企業も国も退職後の面倒を見てくれないだろうと思いますし、アテにしないほうがよさそうです。